TW1(無限のファンタジア)に生きるキスイ・キョウメイ(a76517)の雑記だったり呟きだったりメモ帳だったり
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「キスイちゃんの馬鹿ー!」
いきなり馬鹿呼ばわりされて、キスイは面食らう。
今日は、先日……あれはもう立派な恋愛相談だろう、開き直ることにした……をした友人に、無事その人と付き合うことになったと報告しにきたのだ。彼女のおかげで自身の不可解な気持ちが恋心なのだと認識できたのだから、彼女に礼を言わないと、と思っていたのだ。だが、飛んできたのは怒号。
聞くと、彼女はまだ告白を躊躇っているらしかった。
言わないのか? と首を傾げたキスイに、彼女は「やっぱりキスイちゃんは乙女心がない」とふてくされた。乙女心は確かに身に付いてる自信はないが、それでも成就しそうな恋が目の前でくすぶっているのは少し気になる。
そこまで考えて、はたと気がつく。
そういえば以前はそんなことなんて考えもしなかった。やはり影響は知らず知らずのうちに出ているのだろうか、想い人の顔を頭に思い浮かべると急に恥ずかしくなった。
百面相をしていたキスイをじっと見ていた彼女は、先ほどの怒り方が嘘のようににんまりとしながら身を乗り出す。
「ねぇねぇ、もうキスはしたの?」
その言葉に、キスイは盛大にむせた。
いきなり何事かと視線をやると、彼女は楽しそうに笑っている。
「だって、この間『最初にキスした人が王子様』なんて言ってたんだもの。気になるじゃない」
そんなことを言っただろうか。言ったとしても、今思えば恥ずかしい台詞だ。初心を通り越して馬鹿なんじゃないか、と自身をなじりたい気分になる。
……まぁ、その幻想は確かに未だに捨てきってはいないのが恥ずかしいところなのだが。
「ボクは、別に急いで恋をしているわけじゃないし……個人のペースでいいんじゃないかな、そういうのは」
苦笑しながら言うと、彼女の目が丸くなる。
そして、いつだったか彼女に言われた台詞を、再度言われた。ただし、続く言葉は正反対だったけれども。
「キスイちゃん、変わったね……なんていうか、女の子みたい」
「……キミはボクの性別を何だと思ってたんだ?」
「キスイちゃんって性別」
なんだそれは、と笑うと、彼女は急に優しげな笑みを浮かべてキスイの頬を手のひらで覆う。彼女の肩に乗っていた髪の毛がさらさらと垂れて、それがひどく美しいと思った。
「私たちの集落を守ってくれた、男の子みたいな無理してる女の子。女の子じゃいけないってずっと自分のこと責めてた、女の子」
「それは……」
「でも今は、恋したり、甘いものすごく美味しそうに食べる、普通の女の子。……いい加減、男装やめたら?」
習慣はどうしようもないよ、と苦笑してから……キスイは彼女の肩に、頭を預ける。
すっかり春の香りのする風が心地よくて、このまま身を任せれば眠ってしまいそうだ。
「ボク、変われたかなぁ」
うん、と小さく頷く彼女に少しだけ笑みを浮かべてから、キスイは瞳を閉じる。
おめでとうキスイちゃん、と小さく呟かれたような気がして、ついでに晴れているのに彼女の顔の下の芝生に雫が光っているような気がしたが……胸いっぱいのむずがゆいような想いと、春の風が眠気を誘って、彼女の顔を満足に見ることはできなかった。
夢と現実の境目で、キスイはやけに幸福感に満ちていたことだけははっきりと覚えていた。
いきなり馬鹿呼ばわりされて、キスイは面食らう。
今日は、先日……あれはもう立派な恋愛相談だろう、開き直ることにした……をした友人に、無事その人と付き合うことになったと報告しにきたのだ。彼女のおかげで自身の不可解な気持ちが恋心なのだと認識できたのだから、彼女に礼を言わないと、と思っていたのだ。だが、飛んできたのは怒号。
聞くと、彼女はまだ告白を躊躇っているらしかった。
言わないのか? と首を傾げたキスイに、彼女は「やっぱりキスイちゃんは乙女心がない」とふてくされた。乙女心は確かに身に付いてる自信はないが、それでも成就しそうな恋が目の前でくすぶっているのは少し気になる。
そこまで考えて、はたと気がつく。
そういえば以前はそんなことなんて考えもしなかった。やはり影響は知らず知らずのうちに出ているのだろうか、想い人の顔を頭に思い浮かべると急に恥ずかしくなった。
百面相をしていたキスイをじっと見ていた彼女は、先ほどの怒り方が嘘のようににんまりとしながら身を乗り出す。
「ねぇねぇ、もうキスはしたの?」
その言葉に、キスイは盛大にむせた。
いきなり何事かと視線をやると、彼女は楽しそうに笑っている。
「だって、この間『最初にキスした人が王子様』なんて言ってたんだもの。気になるじゃない」
そんなことを言っただろうか。言ったとしても、今思えば恥ずかしい台詞だ。初心を通り越して馬鹿なんじゃないか、と自身をなじりたい気分になる。
……まぁ、その幻想は確かに未だに捨てきってはいないのが恥ずかしいところなのだが。
「ボクは、別に急いで恋をしているわけじゃないし……個人のペースでいいんじゃないかな、そういうのは」
苦笑しながら言うと、彼女の目が丸くなる。
そして、いつだったか彼女に言われた台詞を、再度言われた。ただし、続く言葉は正反対だったけれども。
「キスイちゃん、変わったね……なんていうか、女の子みたい」
「……キミはボクの性別を何だと思ってたんだ?」
「キスイちゃんって性別」
なんだそれは、と笑うと、彼女は急に優しげな笑みを浮かべてキスイの頬を手のひらで覆う。彼女の肩に乗っていた髪の毛がさらさらと垂れて、それがひどく美しいと思った。
「私たちの集落を守ってくれた、男の子みたいな無理してる女の子。女の子じゃいけないってずっと自分のこと責めてた、女の子」
「それは……」
「でも今は、恋したり、甘いものすごく美味しそうに食べる、普通の女の子。……いい加減、男装やめたら?」
習慣はどうしようもないよ、と苦笑してから……キスイは彼女の肩に、頭を預ける。
すっかり春の香りのする風が心地よくて、このまま身を任せれば眠ってしまいそうだ。
「ボク、変われたかなぁ」
うん、と小さく頷く彼女に少しだけ笑みを浮かべてから、キスイは瞳を閉じる。
おめでとうキスイちゃん、と小さく呟かれたような気がして、ついでに晴れているのに彼女の顔の下の芝生に雫が光っているような気がしたが……胸いっぱいのむずがゆいような想いと、春の風が眠気を誘って、彼女の顔を満足に見ることはできなかった。
夢と現実の境目で、キスイはやけに幸福感に満ちていたことだけははっきりと覚えていた。
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